やる気が出ないなら「まず動く」 2006.04.03

先日とある会合であった方に「最近メルマガのコラムが物足りない」とコメントをいただきました。

普通アドバイスと言うと、相談者に足りない「理論」「情報」「やる気」「気づき」の4つの観点があるのですが、この中で最も経営に直結するのが「やる気」ではないかと思っています。しかしコラムではやる気がある人が前提なので、理論・情報の部分を重視して、やる気とか気づきにあまり触れていなかったから物足りないのではないかと思うのですが、いかがでしょう?

やる気というのは「成功しようという強い欲求」のことだと思います。成功というのは人それぞれで、例えば株式公開するような会社にしたいとか、ヒット商品を生み出したい、海外に進出したい、年収3000万円になりたいとか、セミリタイアして南国で暮らしたい、などイメージが異なりますが、簡単にそれらをまとめると「社会的に評価されたい」「自分の能力を活かしたい」「金銭的な自由を手に入れたい」というような内容になるのではないでしょうか?

この成功に向かおうという欲求が強ければ強いほど、自分の目標を達成するためにがんばれるし、嫌なことでも我慢できるし、苦手なことも克服していけるのだと思います。

例えば、口では『成功したい』と言っている繊維関連の社長さん、展示会に出展してブースにお客さんが来て素材を熱心に見ているのに、そのお客さんに声をかけることすらできません。慣れていないのも、苦手なのも皆一緒です。
でもそれができないのは、成功したいという気持ちが弱いからではないでしょうか。その程度のこともできないのに、顧客から支持されてビジネスを大きくするなんてことはできるわけありません。

またせっかく実力のあるデザイナーに仕事を依頼しても、デザイナーに気後れしたり、遠慮して、意見やアイデアを納得いくまで引き出し尽くそうともしないのに、本当にお客様に支持される商品を作り出すことなどできないでしょう。
成功したいという欲求より、遠慮する気持ちが強いのです。

本気で成功をしたい人には、どこか「ガツガツした」雰囲気があります。
スマートじゃないんです。でもそのパワーに周囲が巻き込まれるようなカタチでビジネスが成長していくのではないでしょうか?

決して利己的になれ、回りに迷惑をかけろ、ということではありません。苦手意識や遠慮や、自分の中の成功しない言い訳を乗り越えろ、ということです。

■やる気が出ればできると言うが
さて、なかなか動き出さない経営者に、いつから動き出すの?と質問すると「今はやる気がでるまで待っている」とか、「本気になればそのぐらいできますよ」と、しばらく待てばやる気が湧いてきて、上手くできる自信があるような答えをする人がいます。しかし、そうやって気持ちが高まるのを待つという人に限って、結局考えすぎで何もできないことが多いのではないでしょうか?

また、いつから動き出すの?という質問に「準備ができたらやります」と答える場合もあるのですが、「では、どこまでできればいいの?」という判断基準を聞くと、あいまいだったり考えていなかったりすることもあります。
これも言い換えれば、準備ができればやる気がでてくる、という漠然とした期待のや甘えの一つなのかもしれません。

ではどういうときに「やる気」が高まるかということを考えたことがありますか?

私は「やる気」を起こすには「まず動き出すこと」が重要だと思っています。
普通は気持ちが先で、行動が後からついてくる、というのが一般的です。まず目標を明確にもって動かないと成果につながりにくい、ということも以前メルマガでお話しました。ただしこれは既に絶対成功する、自分のブランドを大きくするという強い意志があることが前提なのです。

しかし、成功するという意思があまり強くないならば、まず「考えるよりも動く」べきだと思います。前向きに考える癖がついている人ならよいのですが、やる気=成功欲求が弱い人は考え出すとまず「上手くいかない理由」に焦点をあててしまいます。
経験値も少ないので、その上手くいかない理由を克服するアイデアも持ち合わせていません。そうするとどんどん不安が大きくなり、結局動けなくなるのです。

また、口では事業を成長させます、と答えていても、
 ・心の中ではがんばっても無駄だとか、
 ・今のままでも十分じゃないかとか、
 ・失敗するよりは現状維持のほうが安全だとか、
 ・そんなにがんばらなくても何とかなる、
 ・それをすると自分らしさが無くなる、
等と無意識に考えてしまって、行動を制限してしまうのです。

さらに、自分自身に対する観念(セルフイメージ)というものがあります。私は人前では話さない人だ、とか、私は積極的に行動するキャラではない、とか、私はまじめにコツコツと働くのが似合っている、とか自分を制限している枠があるのですが、これを打ち破ったり、拡大したりするイメージを持ちながら、
「まず動き出すのです」

「人はインプットしても変わらない、アウトプットするときに変わる」という言葉があります。読んだり、聞いたり、教えてもらっても人の考え方ややる気は変わりません。自分で考えて、話したり、紙に書き出したり、動いたりしたときに人は変わるのです。

簡単に言うと、自分には無理だと思うこと、苦手だけれど「重要なこと」を自分自身に無理やり強要させます。「苦手意識が無くなったらやろう」と先延ばしのするのではなく、不安や苦手意識は持ったまま「やる」と決めて動き出すのです。いつもの自分に比べて120%ぐらいがんばらないとできないことだし、精神的にもきついことです。

例えば人前で話すのが苦手な人が、あえて人前で話す訓練をするのです。頭がパニックになって、胸がドキドキして、死にそうに恥ずかしくても、それを我慢してやり遂げるのです。これを繰り返すことで、自分に自信がつき、成長する喜びを感じます。この喜びがやる気の源泉になるのですね。たとえ上手く行かなくても、手ごたえを感じることができます。

人に仕事を頼むのが苦手で自分で抱え込んでしまうならば、「人に頼む」という経験を自分に積ませることです。人に頼むことは迷惑をかけることだ、という観念をもっているなら、それを打ち破らなくてはなりません。仕事は一人ではできないものなので、どうしても人に頼むことが必要なのです。

とても簡単なルールなのですが「行動は自分の考え方を強化」します。

たとえ欲求度合いが弱くても、成功したいという気持ちで動くと、それが強化されます。とにかくがむしゃらに動いてみることです。あちこち壁にぶつかったり、トラブルを起こしたり、小さな成功をしたりということが繰り返されることで、だんだん「やりたいこと」「成功したい欲求」がはっきりしてきます。

逆に、苦手意識を持っていることで、「動かない」という行動を選択すると、よけい苦手意識を強化してしまいます。やる気が出るまで待つという行動は、無意識の中の「成功を敬遠する」意識を強化するのです。やる気がでてから動く、という人はよけいにやる気を失っていくのです。

自分で簡単にできることばかりに逃げていてはやる気も湧いてこないのです。
製造業の人が得意なものづくりばかりをしていてもダメなんです。たまには、苦手な営業もやらないとやる気がでないんです。

経営者は自分の苦手なことでも、嫌いなことでも、従業員のため、お客様のために行動を起こさなくてはなりません。自分を奮い立たせているのです。だから経営者からは仕事に対する真剣さが伝わってきます。

自分が生活できるだけの最低限の仕事をすれば満足、という人は、基本的に自分に無理をさせる、ということが少ないからなのか、やる気とか本気があまり伝わってこないように思います。これは会社員でも同じです。

(苦手なことをしなくても十分やっていけてる、という人はそれでいいのです。
 今回はそのやる気がでない人のことを考えているので・・)