サンプルだけorブランド全体 どちらで勝負? 2005.04.17
バイヤーや取引先に商品を提案するときには、できるだけサンプルだけではなく、ブランドコンセプトがわかる資料やこれまでの売上げ実績、できればその店にあわせた品揃え計画や売り場計画を一緒に提案するほうが良いと私は考えています。(もちろんこれは合同展等に出展するときもあてはまります。)
なぜなら、商品サンプル数点だけ持っていった場合、(その商品がとてつもなく魅力的なものなら別ですが)判断材料としての情報が少ないので、基本的には取引できない理由のほうが多くなってしまいます。
「なんとなく良いけど決め手が無い」「私は好きだけど店の雰囲気に合わない」等と言われて取引につながりません。
その断られた言葉の裏には、
・実績も無いブランドの相手をしている暇はない(仕事の邪魔しないで)
・自店の品揃えや雰囲気に合うかわからないから採用しない
(わざわざこれを採用しなくても、雰囲気に合うものは既にある)
・このクオリティやテーストで何シーズンも継続できるか心配
(継続してくれる商品じゃないと手間がかかるだけ損、それよりも既存の商
品のほうが数字が読めて安心)
・点数が少ないとセンスが良いのか、悪いのかわからない。
(これだけ採用しても、これからの商品がセンス悪かったらどうしよう)
・コーナーが作れないような商品ばかりが増えても手間がかかる
(売上げが小さいのに、口座開設や受発注に手間がかかる)
・実際の商品はサンプルよりクオリティが低くなるから油断できない
(まれにサンプルのクオリティが低いものがありますが、それは論外)
などなど、バイヤー側には「買わない理由」が一杯あります。
このネガティブ状態の「意識を変えさせる武器」が必要です。
それが、ブランドのコンセプトや実績、品揃え計画等の提案なのです。
○ブランドイメージやターゲット像を説明していくことで、バイヤーが共感を持ちます。
○品揃え計画を持っていくことで、ブランドの全体像が理解でき、コーナーを任せられるという判断につながります。
○年間のMD計画があれば、安定した取引が継続できそうだと期待できます。
○商品のコダワリや特長がはっきりしていれば、お店での販売方法が具体的にイメージできます。自店の客層に合うか、合わないかすぐに判断できます。
○これまでの売上げ実績によって、顧客に支持されているブランドだということを理解してもらえます。
このような提案や資料によって取引先の頭の中に、「この商品を採用すればお客様に喜んでもらえそう=儲かりそうだ」という意識が芽生えます。
それが、ブランドの売込みにつながるのです。
取引先を「買わない言い訳」を打破し、「買いたい気分」にするのです。
サンプルだけを持ち込むと、単品の好き嫌いや値ごろ感だけで判断されてしまい、やはり先行のブランドや大手に適わないものです。大手ブランドは提案もしっかりしていますから、「大手の実績や安心感」対「新ブランド単品の好き嫌い」の勝負になって、創業期の新ブランドには勝ち目がありません。
ブランドを補足する資料や提案により、将来性や人間性まで加味してもらい「大手の実績や安心感」対「新ブランドの将来性やオリジナリティ」を秤にかけてもらうことで、大手に何とか対抗できる可能性が生まれるのです。
さらに取引の確立を高めたいなら、単品を選んでもらうという受身ではなく、常に取引先の立場で提案する姿勢が必要です。
どうすれば取引先が儲かるかを、取引先以上に考えること。
品揃え?デザイン?仕組み?販促?等など、取引先が考え付かない自分のブランドに適した売り方までを提案していくことで、自分の仕事が能動的になり、相手から必要とされる信頼関係が生まれます。
商品サンプルだけで売り込むと、いつでも他ブランドにとって変えられてしまうという不安を抱えます。下請けとして位置づけられて立場が弱くなってしまいます。
これからずっと「買ってください」とお願いし続けるのか、それともバイヤーから「売ってください」と頭を下げて頼まれるようなブランドになるか?
その鍵は提案の仕方にもあるのではないでしょうか?
いかがでしょう?