「ブランドイメージと売上げ」どちらを取るか 2005.03.30
多くの企業やデザイナーが悩んでいるのが、自社ブランドのイメージを高くするために売り先を絞り込みたい。しかし、絞り込むと売上げが小さくなってしまう。売上げを大きくしたくても、知名度が低い販売先には、イメージが悪くなってしまうので売りたくない。というものです。
さて、このような悩みを抱える企業に話を聞くと、売り込みたい先の候補に上がるのは、たいてい有名セレクトショップだったりします。どうしてそこに売り込みたいのか?と聞いていくと、他の店をあまり知らないから、ということもあるようです。
さてブランドイメージというのは、どうやって形成していくか、しっかり考えたことがあるでしょうか?
考えたことが無い企業に限って、イメージ戦略もどきのことを語ることが多いような気がします。イメージが合わないということばかり気にします。
ほとんどの企業やデザイナーでは、このブランドイメージ形成過程を理解しないままに、「著名店での取り扱い=ブランドイメージ」だと考えています。
しかし、ここが大きな間違いで、ブランドイメージ=「顧客×その顧客が持つイメージ(熱中度や愛着度)」の総和だと考えてください。
(熱狂的なファン)+(固定客)+(たまに購入)+(なんとなく好意)+(嫌い)のそれぞれが持つイメージを足していったものです。
そのブランドを好きな人が多ければ、ブランドイメージも良くなります。「どうしてもそのブランドじゃなきゃ嫌!」「そのブランドならいくらお金をかけてもいい」という熱狂的なファンが多ければ、高額でも売れる強いブランドになります。
ブランドイメージが良いというのは、これらの各段階での支持者が多く、それぞれの意識の中のシェアが高いということです。
簡単に言うと「人気がある」ことに他なりません。
ですから、ブランド構築にあたっては、
1:核となるイメージや商品を発信
2:コアな支持者を作る←ありきたりの商品では支持者が作れない。
3:売れたという成功実績を作る←ここが大事!なのに考えない人が多い。
4:実績によりイメージを高め、さらに固定客化、信者化する
というプロセスが基本です。
多くの人に少しの好意を寄せてもらうか、それとも少数の人に熱狂してもらうかで、ブランドの組み立ては違いますが、小規模ブランドの場合は、熱狂的な信者客をどれだけ作れるか、に重点化したほうが早く成果が出やすいようです。
さて、ブランドイメージは顧客数にも密接に関係します。狙って作るブランドイメージもありますが、結果として「売れている=支持者が多い」ことでブランドイメージがついてくるのです。「売れていない=支持者がいない」のに、販売先を絞ることばかり考えるのは、本末転倒です。
展示会等で、自社商品を気に入ってくれても、知らない店だから売りたくい、と断ってしまう(趣味で仕事をしているような)企業もあります。
私だったら、その知らない店のことをまず調べます。その担当者に電話をしたり、できれば店を見に行って、直接話をききます。もちろん全くテーストが合わないのなら、売るべきではありませんが、店舗が小さくても、その店のバイヤーが熱狂的なファンになってくれれば、成功実績を作るのも容易です。
店舗の規模やイメージではなく、その店の中で自分のブランドの成功実績を作れるか?が販売先選びのポイントです。
それを調べもしないで断っているようでは、イメージのことを言う前に、「ビジネス」をする気があるのか、確かめなくてはなりません。
もし本当に商品力があるのなら、セレクトショップの名前に頼らなくても、どのような店にあっても(安売り店以外は)良い顧客に出会えるようです。良い顧客に買ってもらうことで、ブランドイメージが高まります。収益も安定していきます。「自社商品で、取り扱い店の客を増やしてやる!」ぐらいの気概は持って欲しいものです。
さて、狙いのセレクトショップに商品を取り扱ってもらえるまで、他の店に売るのを控えるというは、どうなのでしょうか?
まずは、取引したいといってくれている店に協力してもらって、しっかり販売して、圧倒的な売上げ実績を作り、その実績を基に狙いのショップに売り込みにいくことをお勧めします。イメージではどうしても負けてしまう海外の著名ブランド等に対抗するには、特定のファンに圧倒的な人気を得ている証拠を見
せることが不可欠です。
その売上げ実績と、実績を作る過程で得られた自信を持って、「○○○や△△△等のショップで1番人気になりました」というのと、何の根拠もなく、自分のデザインに対する思い入れだけで、「セレクトショップでは貴社への持込が始めてです」というのでは、どちらが、バイヤーにアピールするでしょうか?
とにかく、創業期ブランドや無名の企業に必要なのは、売れた実績=支持してくれる顧客がいる=イメージが良い、ことの証明。なのです。
結論としては、売り先を絞るのは、十分な顧客がついてから心配すれば十分、ということです。