「商品を売る」のではなく「お得意様を作ること」 2006.01.10

売上げ目標とか、事業計画という言葉に対して、拒絶反応を起こすデザイナーや製造業者は多いようです。
「私は、売上げよりも自分で納得するデザインをすることが大事」とか「ファッションを分かっていない人に限って売上げのことばかり言う」といいます。デザインが良ければ、商品が売れて、その結果として売上げがついてくるのだから、売上げのことばかり言ってもダメだという考え方のようです。

しかし、この「商品が売れる」という前提は正しいものでしょうか?
皆さんのご両親や上司が仕事をしてきた高度経済成長期やバブル期というのは、需要が供給を上回っていました。この時期にビジネスを経験した人には、商品は作れば売れるもの、無理やり売り込めば売れるものという意識が根強くあります。売れないのは根性が足りないから、という考え方をする人さえいます。

作れば作るだけ売れたので、競合相手やお客様のことをあまり考えずに済みました。「誰が買っているのか、わからないけれど、売れればいい」のです。

しかし、状況が変わった現在、商品は作っても、それだけでは売れないものになりました。お客様は既にタンスから溢れるほど商品を持っていて、何かしら処分しないと、新しいものも買うスペースも無い状況です。既に何も買わなくても困らない生活ができると言ってもいいでしょう。

さらに、広告やちらしは信用されず、売り込もうとすればするほど、お客様が拒絶するようになっています。デザインが多少良いくらいでは、なかなか売れないのです。

このように、過去と現在では全く逆の状況になっているですが、このことを理解できない、したくない人も少なくありません。しかし、作るだけでは売れないという前提でビジネスは考えなくてはなりません。

従来は商品を作れば売れたので、作ってから売れる場所を探すという「商品を売り込む」競争でした。
また「売上げ=商品単価×個数」として表されていました。この数字を見てもお客様のことはわからないですし、何をしたら良いかもわかりません。
(だから事業計画は意味が無い、などと思われてしまうのです。)

しかし、現在ではビジネスとは、自社商品を購入してくれる「お客様」を集める競争になっているともいえます。どんなに商品があっても、購入してくれるお客様がいなければビジネスには成り立ちません。購入意欲のあるお客様がいることがビジネスの成否をわけるのです。

そうすると「売上げ=購入客数×購入額×リピート率」というもう一つの数字のほうが重要になります。商品ではなくお客様に焦点をあてて考えるのです。

こうすると、売上げをあげるためには
 ・購入客数を増やす
 ・購入単価を上げる
 ・リピート率を高める
という方法を考えていけばよいことがわかります。(具体策は次回以降)

さて、このお客様中心に売上げを考えるということは、2005年の3月のメルマガで別の形で触れています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ほとんどの企業やデザイナーでは、このブランドイメージ形成過程を理解しないままに、「著名店での取り扱い=ブランドイメージ」だと考えています。
しかし、ここが大きな間違いで、ブランドイメージ=「顧客×その顧客が持つイメージ(熱中度や愛着度)」の総和だと考えてください。

(熱狂的なファン)+(固定客)+(たまに購入)+(なんとなく好意)+(嫌い)のそれぞれが持つイメージを足していったものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この(熱狂的なファン)+(固定客)+(たまに購入)+(なんとなく好意)+(嫌い)というのは、お客様毎のリピート率や客単価をあらわしているともいえます。

つまり、ブランド作りと売上げは「お客様」を基準に考えると、ほぼ同様のことなのです。
  お客様毎の購入額の総額→売上げ
  お客様毎のイメージの総和→ブランド
まさに表裏一体です。

さて、今回の表題は「お得意様」としています。お客様とちょっとニュアンスが違います。それは、お客様のうち、とくに購入額とリピート率が高いお客様、つまり熱狂的なファンを「お得意様」と表現しているのです。
(熱狂的なファンがいることは成功するブランドの条件です。)

売上げでもブランド作りでも、長い期間、自社の商品を優先して購入してくれる人=「お得意様」の数こそが重要なのです。
自社商品を好きな人のサークルを作りあげるというイメージがわかりやすいかもしれません。

どうやって、このお得意様(熱狂的なファン)を増やしていくか、ということを考えていくのが、売上げをあげるための基本であり、その結果としてお客様のマインドの中にイメージが醸成され、ブランドとなっていくのです。
事業計画というのは、実は「お客様づくり」のプランであり、お客様を見つける、探す、育てる、喜ばせる・・・そのために商品や、販促、営業などをどのように活用していくかを考えることです。
もちろんデザインも、お客様を獲得するために、どのように活かすか、という視点が大事です。