上手くいかない方法を続けても成果はでない 2005.10.19
石の上にも3年、継続は力なり、等など「続けること」の美徳は日本人の心にしっかりしみついているのですが・・・それが逆効果になることがあるかもしれません。
私は創業期の事業構築の基本姿勢は「トライ&エラー&修正」だと思っています。事業が小さいうちに、成果を生み出すための仮説を立てて、それを検証していくのです。
簡単に言うと、何をやったら上手くいくのか、失敗したり、成功したりしながら、自分なりの成功法則を見つけていこうということなのです。
(とは言っても、どのような方法もある程度まで積み重ねないと効果が出ないので、たしかに継続していくことは必要なのですが・・・)
ビジネスが上手くいかない、思い通りの成果が出ないと嘆きながら同じことを続ける前に、「上手くいかない方法を、いくら続けても、成果は出てこない」ことを認識して、少ない投資や労力でトライ&エラーを繰り返すのです。
効果的な方法が見つかったら、そこに重点的に力を注ぐのです。
例えば、製造業者にありがちなのが、サンプルが少ないとブランドの雰囲気がわかってもらえないし、なによりバイヤーに購入してもらえないからと、盲目的に商品点数を増やすことです。とにかく成功するためには絶対条件だとばかりに、とにかくサンプル点数をどんどん増やしていくものです。
あれもできる、これも作れる、こんなのはどうかしら、ととにかく思いつくものをドンドン作ってしまうのです。
では、サンプルが増えれば本当に売れるようになるかというと・・・そういうものではありません。サンプルが多ければ売れるのなら、多くの製造業者はほっといても売れてしまいますよね。
でも売れないのはなぜか、それはブランドの価値が伝わらないからなのです。
価値が伝わらない方法で、点数が増えると、ブランドのイメージが混乱します。
安売り店の大量陳列みたいになってきます。何でもごちゃ混ぜにするバーゲン会場と言ってもよいでしょう。それでは逆に価値が下がってしまいます。
もっと1点、1点の商品価値や、ブランドの価値を高める方法をとらなければダメなのです。
しかし、ずっとものづくりを続けてきた職人さんに、ブランドイメージを作らないと売れないですよとアドバイスしても、本人は「何をしたらよいか」わからないのです。というより「知らない」のです。
職人さんに「自分のつくっているものの特長は何ですか」と聞いてもわからないのです。
で、結局、このわからない職人さんは何をするかというと、ブランドイメージが伝わらないのは、デザインが良くないから、時代にあってないから、とデザインを変更させてまたサンプルを増やします。そうするさらに、デザインがばらばらになってきて、余計にブランドイメージが不明瞭になるから売れるようにならないのです。
ということは、同じ方法を続けても成果は生まれないのです。
しかし、多くの場合
(1)思い込みが強くて、自社ブランドについての客観的な判断ができない。
(2)自社に都合が悪い情報は遮断し現実逃避する。(批判は聞かない)
(3)変化を嫌う。新しい方法をとることに不安を感じる。
今まで通りのやり方を継続するほうが効果的だと盲目的に信じる。
(4)成功体験が無い(もしくは成功体験を知る機会が無いので)、
どのような方法が効果的か知らない。
(5)成功に対する目標値が低く、圧倒的な成果を求めようとしない。
などの理由により、今まで通りの方法が継続されることが多いのです。
今まで通りのやりかたを続けるのは精神的に楽です。
「上手くいかないのは、根性が足りない」「上手くいかないのはまだまだ自分が未熟だから」と考えるタイプは、同じことを継続したがるようです。
確かに自分を反省するのは必要ですけど・・・反省のピントがずれているのですが、本人は気づかないのです。
気づかないから同じ方法をとってしまうのです。
気づかないから他の方法の必要性を感じないのです。
成果を生むためには、今までと違うやり方を試さなくてはいけないのです。
大きく変える必要はありません。小さくいろいろと試せばよいのです。
上手くいくと思える方法が見つかってから、そこに予算や資源、労力を重点化していけばよいのです。一か八かの賭けにお金をつぎ込むのは賛成できません。
上手くいく方法が、自分でわからないなら、知人や関係者など客観的に判断してくれて、ビジネスを応援してくれる人に聞けばよいのです。
先日の台東区若手経営者セミナーの講師が「素直な人ほどビジネスが成功する」、「素直じゃない人は絶対成功したビジネス経営者にならない」というのは、言っていました。
素直なこと=アドバイスを素直に受け入れること=新しいことにも積極的にチャレンジするなのだそうです。
素直だからすぐに実行してみるのです。ダメなら辞めればよいのです。
やる前からあれこれと言い訳ばかり考える人は、おそらく経営者に向かないのではないでしょうか。